金属脱脂剤の役割とは?脱脂剤の選び方や排水処理の対応策などについても解説
脱脂は、金属表面に付着した油分や汚れを徹底的に除去する工程です。めっきや塗装の密着性、耐食性、製品の美観を左右する基盤となります。適切な脱脂剤を選定することは、後工程での不良率を低減し、安定した品質を維持するために欠かせません。こちらでは、金属脱脂の基礎知識、脱脂剤の選び方、剥離防止、排水処理の対応策について解説します。
浸漬脱脂剤とは?金属脱脂剤の役割

金属加工において、複雑な形状を持つ部品や大量の部品を一度に処理する際、効果的な手法として浸漬脱脂が広く採用されています。
浸漬脱脂が金属加工で選ばれる理由
浸漬脱脂とは、脱脂剤を溶解させた洗浄槽に部品全体を浸漬させることで、洗浄液が隅々まで行きわたり、均一な脱脂効果を得る方法です。スプレーや拭き取りでは届きにくい微細な部分の汚れも除去でき、自動化による大量生産やコスト削減にも大きく貢献します。また、洗浄後の部品に残留する不純物を最小限に抑え、次工程への悪影響を防ぐことができます。
金属脱脂剤の基本タイプとその特徴
金属脱脂剤は、その化学的性質によって主に以下のタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解し、洗浄対象の金属や汚れの種類に応じて選定することが重要です。
アルカリ性脱脂剤
油分や脂肪酸の鹸化作用と、汚れの分散作用を組み合わせることで、高い洗浄力を発揮します。切削油、プレス油、防錆油など、頑固な油汚れの除去に優れています。非鉄金属への影響を考慮して、pHや添加剤を調整した製品も存在します。
中性脱脂剤
金属への腐食性が低く、デリケートな精密部品や非鉄金属の脱脂に適しています。洗浄力はアルカリ性に比べて穏やかで、界面活性剤の働きにより、乳化・分散作用で汚れを除去します。軽度の汚れや錆の除去に用いられることが多いです。
酸性脱脂剤
脱脂と同時に錆や酸化スケール、水垢などを除去する効果があります。鉄鋼材料の錆取りと脱脂を同時に行いたい場合に有効です。アルカリ性脱脂剤では除去しきれない、無機系の汚れに対しても効果を発揮します。非鉄金属への使用には注意が必要です。
金属向け脱脂剤の選び方と剥離対策

めっきや塗装の剥離は、脱脂工程での不備が原因で発生するトラブルの一つです。剥離を防ぐためには、洗浄対象の金属や汚れの種類、次工程への影響を考慮した脱脂剤を選定し、適切な管理を行うことが求められます。
材質に合わせた選定ポイント
金属の種類によって、脱脂剤への反応は異なります。
鉄・ステンレス
アルカリ性脱脂剤に対して比較的高い耐性を持ちます。強固な油汚れの除去には、強力なアルカリ性脱脂剤が有効です。ただし、脱脂剤の成分によっては微細な凹凸が形成され、その後のめっきや塗装の密着性に影響を及ぼすことがあるため、次工程を考慮した選定が求められます。
アルミニウム・銅
アルカリ性が強すぎると表面が荒れたり、変色したりすることがあります。そのため、弱アルカリ性脱脂剤や中性脱脂剤の使用が一般的です。素材を保護しながら洗浄を行うことで、製品の品質を維持します。
亜鉛ダイカスト
非常に反応性の高い金属であり、アルカリ性脱脂剤に長時間浸漬すると表面が侵食されることがあります。亜鉛ダイカスト専用の脱脂剤、または中性脱脂剤を使用することが推奨されます。
剥離トラブルを防ぐための工程管理
剥離トラブルは、脱脂不足による汚れの残留、過剰な脱脂による金属表面へのダメージが主な原因です。問題を防ぐには、脱脂剤の濃度、液温、浸漬時間の管理が重要です。
濃度管理
脱脂剤の濃度が低いと十分な洗浄力が得られず、油分が残留します。逆に高すぎると、金属表面を過度に侵食し、後工程での密着性を低下させる可能性があります。定期的な濃度測定と補充が必要です。
温度管理
脱脂剤にはそれぞれ最適な液温があります。温度が低いと洗浄力が低下し、高いと脱脂剤の劣化を早めるため、適温を守ることで洗浄効果を引き出せます。
浸漬時間
洗浄対象の汚れや材質に合わせて、適切な浸漬時間を設定することが重要です。短すぎると洗浄不足、長すぎると素材へのダメージやコスト増につながります。
金属脱脂における排水処理の重要性とその対策
工場から排出される脱脂廃液は、水質汚濁防止法をはじめとする各種環境規制の対象となります。法律を遵守し、企業の社会的責任を果たすためには、適切な排水処理が不可欠です。また、排水処理は環境保護だけでなく、処理にかかるコストや手間を削減するという経営的な側面も持ち合わせています。
脱脂廃液処理の主な課題
脱脂廃液は、油分、界面活性剤、金属イオン、pHなど、さまざまな要因が複合的に絡み合っており、その処理は一筋縄ではいきません。
pHの調整
アルカリ性や酸性の脱脂廃液は、そのままでは排水基準を満たしません。凝集沈殿処理を行う前に、中和剤を用いて廃液のpHを中性に近づける必要があります。この工程を怠ると、排水管の腐食や、後段の処理設備への悪影響が生じます。
油分・界面活性剤の分離
脱脂剤に用いられる界面活性剤は、油分を水中に乳化させる働きを持つため、物理的な分離が困難です。そのため、凝集剤を添加して油分と界面活性剤を凝集させ、沈殿・分離させる方法が一般的です。この分離を効率的に行うには、適切な凝集剤の選定と注入量の管理が重要となります。
処理コスト
排水処理には、設備投資、薬品費用、電気代、人件費など、多額のコストがかかります。また、廃液量が多いと処理設備の能力を超えてしまい、生産効率に影響を与える懸念があります。
排水処理を考慮した脱脂剤の選定
排水処理の負担を軽減するには、脱脂剤の選定段階から、廃液処理のしやすさを考慮することが重要です。例えば、界面活性剤を使用していない脱脂剤や、生物分解性に優れた脱脂剤を選択することで、処理の手間やコストを削減できる可能性があります。また、水処理工程を簡略化できるタイプは、トータルのランニングコストを抑えることも可能です。
適切な脱脂剤を選定・管理することは、品質の向上に加えて生産コストの削減などにも直結します。
金属洗浄剤に関するご相談ならサンライト株式会社へ
サンライト株式会社では、長年の経験と製品総数約300種以上の豊富なラインナップに基づき、お客様の多岐にわたる課題解決をサポートしております。金属の種類、汚れの性質、生産ラインの状況、環境への配慮など、個々のニーズを丁寧にヒアリングし、最適な脱脂ソリューションをご提案いたします。
浸漬脱脂や剥離、排水処理など、金属加工における脱脂工程でお困りのことがございましたら、ぜひご相談ください。専門知識を活かし、課題解決に向けたお手伝いをさせていただきます。
金属脱脂剤・錆取り薬品・金属表面処理・めっき剥離方法などに関するコラム
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