浸漬脱脂や電解脱脂の基礎知識とは?めっき脱脂と排水処理の課題などについても解説
めっき処理において、脱脂工程は最終製品の品質に直結する重要な工程です。しかし、脱脂剤の選定や排水処理は現場の技術者にとって悩みの種となることも少なくありません。こちらでは、めっき脱脂の基礎知識、脱脂剤の選び方、排水処理のポイントについて解説します。
浸漬脱脂の基礎知識と現場でのポイント

高品質なめっき被膜を形成するには、前処理で対象物の表面に付着した油脂や汚れを除去することが欠かせません。この工程が脱脂です。脱脂が不十分だと、めっき被膜にピンホールやムラが生じたり、密着不良を起こしたりするなど、深刻な品質問題につながります。
めっきの品質を左右する脱脂の役割
適切な脱脂工程により、以下の効果が得られます。
めっき被膜の密着性向上
表面の油脂を取り除くことで、被膜と素地間の密着性を高め、強度と耐久性を向上させます。
外観の向上
油脂や汚れによる光沢ムラやくもりを防ぎ、製品の美観を保ちます。
耐食性の確保
密着不良による腐食の進行を防ぎ、製品の耐食性を向上させます。
浸漬脱脂の仕組みと界面活性剤の役割
浸漬脱脂はアルカリ性の脱脂液に素材を浸し、界面活性剤の力で油汚れを除去する方法です。主な作用は以下のとおりです。
乳化作用
水に溶けない油を微細な粒子として水中に分散させ、白濁したエマルジョン状態にします。これにより、水と油が混ざり合い、油汚れが洗浄液中に浮遊しやすくなります。
分散作用
一度洗浄された汚れが再び素材に付着するのを防ぎます。洗浄液を安定した状態に保ちます。
可溶化作用
界面活性剤の分子が集まってミセルを形成し、その内部に油分を閉じ込めることで、水溶液中に溶解させます。
これらの作用により、浸漬脱脂でも効率的に油汚れを取り除くことが可能です。
浸漬脱脂における現場課題
浸漬脱脂は比較的シンプルな方法ですが、現場では以下の課題が発生することがあります。
- 複雑形状の部品や頑固な油汚れへの対応が不十分
- 温度管理の不備による洗浄ムラや作業効率の低下
- 泡立ちの多さによる脱脂液の効果低下
これらの課題への対策として、適切な脱脂剤の選定が重要です。
電解脱脂の原理と薬剤の選定ポイント
浸漬脱脂では除去しきれない頑固な汚れや強固に付着した油分、スケール、スマットには、電解脱脂が有効です。電解脱脂は、電気化学的反応と物理的な剥離作用を組み合わせることで、浸漬脱脂よりも強力な洗浄効果を発揮します。
電解脱脂のメカニズム
電解脱脂槽に薬剤を入れ、直流電流を流すことで、ワーク表面から水素ガスや酸素ガスが発生します。このガス発生が、頑固な汚れの除去に大きく貢献します。
物理的剥離作用
発生した微細なガス泡が汚れとワークの間に入り込み、物理的に汚れを剥がします。浸漬脱脂では届かない隙間の汚れにも効果があります。
電気化学的作用
電極反応によって汚れの化学構造が変化し、水への溶解性が向上します。界面活性剤だけでは落としにくい汚れにも有効です。
素材に合わせた電解脱脂剤の選定
洗浄する素材に適した薬剤を選ぶことが重要です。不適切な薬剤は、腐食や変色の原因になります。
鉄鋼・ステンレス
主にアルカリ性の電解脱脂剤が使用されます。強アルカリ性の薬剤は洗浄力が高い一方、処理時間や温度管理が重要です。
銅・銅合金
中性から弱アルカリ性の薬剤が適しています。強アルカリ性は変色リスクがあるため、注意が必要となります。
アルミニウム
両性金属のため、専用薬剤を使用します。腐食抑制成分が配合されたものが望ましいです。
電解脱脂の仕組みや素材別の薬剤選定を理解することで、現場での洗浄トラブルや素材への影響を最小限に抑えることができます。日々の作業に活かすことで、めっき品質の安定化に役立ちます。
めっき脱脂と排水処理の課題やコスト対策

めっき・金属洗浄の現場では、脱脂工程での洗浄効果だけでなく、排水処理も重要な課題です。脱脂に使われた薬剤や洗浄後の排水を適切に管理しないと、環境への影響や法的リスク、コスト増加につながります。
なぜ脱脂後の排水処理が重要か
脱脂排水には、界面活性剤、アルカリ分、除去された油分などが高濃度で含まれます。これらは環境への負荷が大きく、法律で適切な処理が義務付けられています。現場で意識すべきポイントは以下のとおりです。
- 適切な処理を行わないと法令違反のリスクがある
- 環境汚染の原因となる
- 排水処理コストは脱脂剤選定によって大きく変わる
脱脂剤を選定する段階から排水対策も考慮することで、トータルコストの最適化が期待できます。
排水処理の基本ステップとコスト削減
一般的な脱脂排水の処理は、以下のようなステップで行われます。
- 中和処理:アルカリ性排水に酸を加え、pHを中性に調整する
- 凝集・沈殿処理:凝集剤で微細汚れや油分を塊にして沈殿させる
- 分離処理:沈殿した固形物(スラッジ)と上澄みを分離する
排水処理には設備費、薬剤費、維持管理費がかかります。中和に要する薬剤量を抑えたり、泡立ちや油分分離の負荷を軽減できる脱脂剤を選ぶことで、コスト削減が可能です。例えば、低泡性・低汚染性の薬剤は、泡立ちが少なく、排水負荷を軽減できます。リサイクル可能な脱脂剤の場合、ろ過や膜分離で繰り返し使用でき、薬剤消費量の削減につながります。
脱脂剤の選定と排水処理の工夫により、排水負荷や薬剤コストを抑えつつ、めっき品質を維持できます。現場の状況に応じた選択がポイントになります。
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